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10月 2010 のアーカイブ
Hello world!
2010年10月2日製本後(2010.4.14~2010.4.30)
2010年10月2日4/14 移植腎生検
(日本腎臓学会雑誌 47巻 2005)
移植腎の1年生着率は95%に達しようとしており、以下の問題が出現。
①免疫抑制剤による腎障害と拒絶反応との鑑別
②多くはステロイドを飲んでおり、生検による感染や出血の問題
③必然的に単腎である
(1)移植腎生検の適応
・移植腎の現状と免疫抑制療法の妥当性の評価…プロトコール・バイオプシー
・移植腎機能低下が起きた場合の原因究明…エピソード・バイオプシー
プロトコール・バイオプシー
Zero hour biopsy、one hour biopsy、移植30日後、半年後、1年後等に行う。目的としては、カルシニューリン・インヒビターによる毒性所見の有無、原疾患の移植腎発症の有無(巣状糸球体硬化症,IgA腎症)、無症候の急性拒絶反応の有無を評価する。
エピソード・バイオプシー
急性拒絶反応の有無と程度、カルシニューリン・インヒビターなどによる薬剤性腎障害の有無、ウイルス感染(CMV、BKウイルス)による腎障害の有無、慢性移植腎機能障害(Chronic Allograft Nephropathy: CAN)の有無を評価する。
特徴的な所見として…
・Owl-eye body…サイトメガロウイルス
・Decoy cell…BKウイルス
(2)患者への説明
抗血小板薬や抗凝固薬の中止は出血を防ぐ意味でも重要であるが、エピソード・バイオプシーの場合は緊急に施行する場合が多いので中止は不可能。止血を十分確認するか、あるいは開放腎生検を選択する。
(3)注意を要する薬剤
抗凝固薬の中止基準は以下のようである。
・パナルジン…10~14日
・エパデール…7~10日
・バイアスピリン…7日
・プレタール…3日
・プロサイリン…3日
・アンプラーク…1~2日
・オパルモン…1日
・ワーファリン…5日(あるいはワーファリンに変更)
・ペルサンチン…中止の必要はない
(4)準備
術前の絶食と1時間前からの飲水禁止。
(5)手技
ほとんどの場合、移植腎は右下腹部に移植されている。検体採取後5時間はベッド上安静とする。服薬は術前どおりとするが上半身は起こさないようにする。生検後5時間以降はトイレ歩行可とするができるだけ安静を保つ。
(6)検体処理
採取した検体は乾燥を防ぐために生食をかけておく。実体顕微鏡で糸球体が採取されていることを確認する(赤いマリモ状に見える)。
(7)合併症
合併症は血尿、移植腎皮膜下出血、移植腎周囲出血、移植腎内動静脈瘻などの発症率は0.5~1%である。
4/15 硫酸マグネシウムにより誘発されたと考えられる、稀な胎児心拍数モニタリングの一例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
CTG上、variabilityの減少やacceleration消失などの影響を与えうる硫酸マグネシウムの投与によって、Checkmark pattern(小さなaccelerationの後の小さなdeceleration)の波形が出現し、中止により消失した予後良好な胎児例を報告してあった。
純粋になるほど。Checkmark patternを示した予後不良例もある為にBPS等の評価が不可欠なことはいうまでもない。
4/16 胎内で診断された先天性四肢欠損症の一症例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
妊娠24週の胎児エコーで診断に至っている。四肢以外の胎児の発育(頭部大横径、腹囲)は問題なく、出生後も呼吸・循環には異常を認めていない。染色体検査も正常核型の46XYであった。先天性四肢欠損において上肢の欠損は下肢の2倍、片側性が両側性の4倍の頻度である。原因は発生異常や胎内での血流遮断に加え、
● サリドマイド
● ヒダントイン
● ワーファリン
● バルプロ酸
● コカイン
● 母体糖尿病
● 喫煙
がある。加えて合併症として筋骨格系奇形、頭頚部、心血管系、消化器系、泌尿生殖器系がある。
4/17 胎便関連腸閉塞症との鑑別が困難であった先天性短腸の1例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
新生児の腸の長さは200~250cmであるが、患児は62cmであった。穿孔時は炎症所見の悪化もあるが腹部X線での腸管ガスの腹部中央への局在と腹腔内遊離ガスの存在を決め手としている。短腸症候群の児が、中心静脈栄養離脱のための残存腸の長さとしては回盲弁がある場合は10~20cm、ない場合は20~30cmが限度らしい。
よくわからないのが、手術終了後も遷延した代謝性アシドーシスの原因について、極低出生体重児における尿酸性化能の低下という理論。勉強不足です。
4/18 早期診断により眼病変の進行を制御できた色素失調症の一例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
これは感動した。葛飾赤十字病院の松村好克先生の投稿。
出生時の皮疹の正常から色素失調症を疑い眼科に対診を出し、日齢14には光凝固術を施行されている。この疾患は診断の契機となる皮膚所見はいずれ消失するがそれ以外の合併症が問題であることから、皮疹を見つけた時点での対応が問題になる。
皮膚所見以外の合併症は約50~80%で、網膜血管異常を伴う眼病変や、中枢神経障害(精神発達地帯、てんかん、麻痺など)、骨病変(頭蓋骨、椎骨の変形など)、歯牙の欠損・発育不全、毛髪の異常(脱毛、疎毛、縮毛、多毛など)、爪の欠損・発育不全などが知られている。
早い対応が児の視力を守ったと考えられる。これぞ小児科医の腕の見せどころだ。
4/19 未治療の梅毒妊婦から出生した先天梅毒の1例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
梅毒は結核同様に過去の病気ではない。
梅毒は経胎盤感染で全妊娠期間に感染は成立しうる。梅毒の妊婦に対するPC治療により98.2%の児の先天梅毒が予防できる。無治療の場合は40%が死産や流産、40%が先天梅毒を生じる。児の治療は出生時に症状を有するか、あるいは症状を認めない場合、児のRPRが母のRPRと比べて4倍以上高い場合に治療の対象となる。
症状とは、貧血、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻炎、鞍鼻、髄膜炎、梅毒性天疱瘡がある。
4/20~29 Strict Blood-Pressure Control and Progress
(New England Journal of Medicine 361-17 2009)
成人領域でRAA系を抑制することはCKD患者の腎不全への進展を抑制するが、血圧の目標設定値には議論の余地があり、小児でも高容量のACE阻害剤内服による腎保護効果を検討している。CKDとなり5年以上が経過した385人の小児に対し、ramiprilを服用することにより積極的降圧群(24時間平均血圧を50パーセンタイル未満)と通常降圧群(24時間平均血圧を50~95パーセンタイル)に分け5年間調査した。調査中にGFR50%低下あるいは末期腎不全へ進展したのは積極的降圧群では29.9%、通常降圧群では41.7%で有意差があった。有害事象の発生に有意差はなし。蛋白尿は血圧が良好にコントロールされていたとしても、最初に半減した後にリバウンドする。腎障害の進行については血圧の目標値と蛋白尿の減少が予知因子であった。CKD患児の腎不全の進行阻止において積極的降圧は有利に働く。最初の降圧療法成功後に蛋白尿が再出現することは良く見られる現象である。
4/30 長期経口栄養摂取不良母体から出生し重度の出血傾向を呈したビタミンK欠乏性出血症の低出生体重
(日本周産期新生児医学会誌 46巻1号 2010)
新生児のビタミンK欠乏に、母体の抗痙攣薬、抗結核薬、抗凝固薬内服に加え、栄養不良状態が上げられる。母体→胎児へのビタミンK移行はあるものの、その結果の血液中の濃度は母体>胎児であり、母体が出血傾向を呈さなくても胎児が呈することはある。従って、母体が上記のような素因を有するときは症状の有無に限らずビタミンKを投与することが新生児の出血予防に有効であると著者は書いている。臍帯血のPIVKA-Ⅱ測定も有用であると書いてあった。
製本後(2010.4.10~2010.4.13)
2010年10月2日4/10 開放腎生検
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
経皮腎生検と比較して、①情報量、②安全性において優れる。
①について、半月体形成や係蹄壊死、糸球体の分節状硬化、糸球体上皮細胞の変性像、管内硝子様血栓、浸出性病変などは通常は巣状分布であり、腎生検の無作為抽出という性格上、偽陰性の可能性を常に伴う。
②について、若年者では生検による動脈損傷があっても出血が多量に及ぶことは少ない。しかし、、高齢者あるいは腎機能が低下した症例では小葉間動脈レベルの小動脈の損傷がしばしば大出血を生じる。全身性血管炎など、一部の例外を除けば腎生検で診断される病態の転帰は最悪で腎死であり個体死ではない。したがって、腎生検が僅かであれ個体死を招く可能性のあるものであってはならない。
開放腎生検の適応と禁忌。
《適応》
・ 血管の自動収縮能が低下している患者(高齢者,血管炎,腎機能低下例など)
・ 片腎
・ 安静が困難な患者
《禁忌》
・ 出血傾向
・ 顕性感染症
・ 多発性嚢胞腎
※体位はジャックナイフ位、皮切は12肋骨弓下縁から1横指下!腹腔鏡はポートの為に複数の皮切が必要で安全とはいえない。
4/11 腎生検後の安静度
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
★穿刺前
止血薬として、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム25~50mg(アドナ®)、トラネキサム酸250~500mg(トランサミン®)を維持輸液に混注して滴下させる。腎生検に関して明確なエビデンスがあるわけではない。速度が速いと嘔気や気分不快感などを訴えることがある.ただし,肉眼的血尿が発生した場合,線溶系阻害薬であるトラネキサム酸を使用すると,尿路内での凝固を促進するので注意が必要である.
★穿刺終了後30分以内
穿刺直後は腹臥位のまま約10分間圧迫。圧迫後に超音波で血腫の有無を確認し出血が多い場合は更に20分間圧迫を追加。
★穿刺終了後2~8時間
仰臥位にして砂嚢を用いて2~8時間圧迫する。この間、穿刺とは反対側の股関節、膝関節の屈曲を許可し、その後、穿刺側の膝関節の屈曲も許可する(穿刺側の股関節の屈曲は許可しない)。
★穿刺終了後6時間以内
生検後の多量の腎周囲出血、肉眼的血尿は多くは6時間以内におこる。
★穿刺終了後6~12時間
側臥位等の体位変換を許可できる時間は6~12時間後。側臥位にする場合は穿刺側を下にする。
★穿刺終了後12時間以内
重篤な合併症は12時間以内におこる。
★穿刺終了後18~24時間
立位の許可。
4/12 小児における腎生検
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
(小児科臨床 56巻 2003)
(1) 腎生検の適応
a) 血尿
顕微鏡的血尿の場合は基本的には適応はない。しかし腎不全の家族歴があるときは遺伝性腎炎の可能性を考慮し適応となる。肉眼的血尿の場合や30mg/dl以上の蛋白尿を呈する場合は適応となる。低補体血症が持続する場合も適応となる。
b) 蛋白尿
早朝尿で尿蛋白陰性の場合は起立性蛋白尿として腎生検の適応はない。しかし腎不全の家族歴があるときや早朝尿で30mg/dl以上の蛋白尿が持続する場合は適応となる。血尿を認める場合も適応となる。
c) 血尿+蛋白尿
上記に準ずる。
d) 急性腎炎症候群
典型的な溶連菌感染後糸球体腎炎であれば腎生検は施行しない。先行感染、ASO上昇、低補体血症を認めない例や低補体血症が3ヶ月以内に改善傾向を認めない例や6ヶ月以上持続する例では適応となる。
e) ネフローゼ症候群
ステロイド抵抗性や頻回再発例、腎炎症状(持続的血尿、肉眼的血尿、高血圧、腎機能低下、低補体血症など)を有する例が適応となる。またCyA導入する際はその前と導入後2年毎に施行する。生後1年以内に発症するネフローゼ症候群についても適応となる。腎機能低下を認める場合も適応となる。
f) 紫斑病性腎炎
ネフローゼ症候群、高血圧、腎機能低下を呈する場合は早期の適応となる。また発症後4週間で早朝尿30mg/dl以上の蛋白尿が持続する場合や紫斑の出現を繰り返し、尿所見がその都度悪化する場合も適応となる。
g) 全身性エリテマトーデス
尿所見を認めなくても病理所見が著明なこともあり(silent lupus nephritis)全例適応となる。
h) 急性腎不全
急性腎不全のうち、腎実質障害が原因と考えられるものは、原因検索の為に適応となる。
i) その他
精密検査希望などの社会的適応も視野に入れる。またIgA腎症や膜性増殖性腎炎などの治療開始後2年目で再腎生検を行い治療方針の見直しをする場合もある。同側腎での再生検は線維化等の前回生検の影響が出るために反対側で行う。
ちなみに開放腎生検は検体を確実に採取でき確実な止血もできるが術後疼痛の問題と再生検ができない点が難点である。
(2) 腎生検の禁忌
片腎、出血傾向(出血時間もチェック)、高血圧(コントロール後に)、尿路感染症急性期、嚢胞腎、水腎症、腎奇形、萎縮腎、高度の心不全、呼吸停止ができない例など。
正常の腎サイズの80%未満の場合は萎縮腎として適応外となる。
(3) 患児・家族への説明
開放腎生検の適応を充分に考慮。
(4) 術前の検査
抗血小板薬、抗凝固薬については成人の腎生検に準じる。
(5) 術前の処置
透視下で行う場合は浣腸等の処置がある。
(6) 経皮的腎生検の実際
一般的に生検針の選択は以下の様である。
|
ストローク長 |
針 |
採取片 |
年少児 |
11mm |
18G |
3片 |
年長児 |
16~22mm |
16G |
2片 |
それ以上 |
22mm |
14~16G |
1~2片 |
(7) 術後の処置と観察
術後6時間まで:1時間後とのバイタルチェック
術後12時間まで:砂嚢による圧迫
術後24時間まで:安静の意味もこめて輸液を施行する、ベッド上安静
生検後より3日間:トランサミン内服
(8) 安静解除
生検後5日:退院
生検後1ヶ月:激しい運動は禁止
(9) 合併症対策
生検後の第一尿の血尿は通常は48時間以内に消失する。持続する場合は動静脈瘻の可能性を考慮する。血尿に対して過剰な止血剤の投与は血腫による尿路閉塞のリスクを上昇させる。膀胱内血腫が確認されればヘパリン加生理食塩水で膀胱内洗浄を施行する。
腎生検後約1週間で腎周囲血腫の吸収熱(37~38℃)を認める場合があるが一過性で自然に解熱する。
4/13 腎生検検体の処理
(日本腎臓学会雑誌 47巻 2005)
(1)採取組織切片の大きさと各種検査用検体の分配
腎生検で2本以上の有効な検体が採取された場合、蛍光抗体用の組織は3mm以上の大きめな切片を確保し、電子顕微鏡用の小組織も2 個以上は確保したい。また1本の場合には、採取部分に皮質が含まれることと、光顕組織診断に必要な最低限の組織を残すことができることを確認して、1.5mmの小組織片を両端から2個切り出し、各々蛍光抗体法用凍結組織と電子顕微鏡用固定液に移す。採取組織がとても小さなときには、皮質側から各々1個の蛍光抗体用と電顕用組織片を確保するように努める。
基本的には糸球体が10個以上含まれていなければ有効な検体とは言えない。また巣状糸球体硬化症や膠原病性腎症、移植腎では病変の発現にムラがあり、腎生検がその全体像を正確に反映しないことも考慮する。
(2)迅速診断用組織処理か永久標本か?
◎迅速(30分)診断用組織処理:新鮮凍結切片を用いる。術中迅速診断などで利用されるが標本の質は良いとは言えず、染色もHE染色やPAS染色などに限定される。
◎永久標本:パラフィンや樹脂に包埋したもの。急がない場合はこちら。
(3)迅速ではないが1日以内に診断をつけたい場合
移植腎の拒絶反応と免疫抑制剤による腎毒性との鑑別などに使用する。通常の施設であれば2~7日程度の時間がかかる。
以前使用していた水銀を含んだホルマリン固定液であれば1時間程度での固定が可能であったが、有毒である水銀の使用が控えられており現在では施行できない。代わりに使用される緩衝ホルマリン液での固定に通常は8時間以上かけるが、マイクロウェーブを使用することで1時間程度まで短縮可能となる。そうすれば標本作成に必要な、固定、包埋過程(脱水、パラフィン浸透、パラフィンブロック作成)、薄切、染色、封入の全過程を8時間程度で行うことができる。永久標本を24時間以内で作製するのであれば、マイクロウェーブを使用しなくともよい。14Gの針生検組織片は、緩衝ホルマリン液にて4時間の固定を行えば標本の質に悪影響なく作成できる。
(4)標本の固定について
病理医は10 %または20 %緩衝ホルマリン液を推奨している。厚さは3ミクロンが適している。
(5)必要な切片の数
染色の方法は、HE、PAS、PAM、Masson trichromeの4種類があり、HEとPASの各3枚とMassonの1枚を最低必要としている。切片数に関する標準はないが,4種類の染色あたり各2枚の計8切片は必要であろう。
過去に腎生検の既往がある場合は、同側の組織には高度の線維化を認めることがある。腎生検前の超音波で腎皮質表面に陥凹等がある場合は反体側の穿刺も考慮する。
(6)免疫組織化学診断
蛍光抗体法と酵素抗体法が重要であり、蛍光抗体法は新鮮凍結切片を用いる。液体窒素やドライアイスに有機溶媒を使用する場合でも重要なことは検体と有機溶媒が直接触れないことである。酵素抗体法はパラフィン切片を用いる方法で、光学顕微鏡と所見を対比できることや、蛍光抗体法で観察したい糸球体がない場合などに有用である。酵素抗体にて,免疫病理診断を行う際,留意すべきことは,免疫沈着に関し,granularとlinearの区分ができないことがあること,IgMやC1qに非特異的陽性が起きやすい,易熱性の補体の検出感度が低くなることである.
(7)電子顕微鏡
費用がかさむが以下の疾患の診断に有用である。光学顕微鏡や免疫組織化学診断から電子顕微鏡による診断が必要かどうかを評価することが重要である。
(8)特殊な腎生検組織診断
腎臓のウイルス感染症診断ではin-situ hybridizationがきわめて有用である.
製本後(2010.4.7~2010.4.9)
2010年10月2日4/7 生検前のチェック項目
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
【腎生検前の病歴聴取】
★家族暦:検尿異常者、腎疾患患者、腎不全患者、透析患者、視力障害、聴力障害
★既往歴:検尿異常歴(学校・職場)、高血圧歴、妊娠歴、糖尿病歴、感染症既往歴
★重要な問診項目:血尿・蛋白尿の出現時期、息止めの練習、長期臥床が可能か
【内服薬の中止時期】
内服薬の中止は、腎機能,肝機能,年齢,肥満度,併用薬剤などにより半減期が変化している場合もあるので注意しなければならない.
薬剤 |
商品名 |
半減期(T1/2) |
中止時期 |
抗凝固薬 ワルファリンカリウム ヘパリン 低分子ヘパリン
|
ワーファリン ヘパリン フラグミン カプロシン |
45時間 0.3~2時間 2.2~6時間
|
1週間前後 1日 1日
|
抗血小板薬 ジピリダモール
塩酸ジラゼプ 塩酸チクロピジン シロスタゾール アスピリン イコサペント酸エチル 塩酸サルポグレラート リマプロストアルファデクス |
ペルサンチン アンギナール コメリアン パナルジン プレタール バイアスピリン エパデール アンプラーク オパルモン |
25分~15時間
3時間 1.6時間 18時間 2~30時間 Tmax 6時間 0.69時間 7時間 |
2~3日
1日 1週間 2~3日 3~4日 2~3日 2~3日 2~3日 |
プロスタグランジン製剤 ベラプロストナトリウム
|
ドルナー プロサイリン |
1.1時間
|
2~3日
|
【腎生検前のチェック項目】
◎血液型:ABO型、Rh型
◎便検査:オルトトリジン、グアヤック、ヒトHb←検査後の貧血出現時の鑑別、ステロイドの副作用のチェック
◎凝固系検査:aPTT、PT、HPT、TT、FDP、Fbg←抗リン脂質抗体症候群
◎血小板機能検査:出血時間(<5min)
◎末梢血検査:WBC、RBC、Hb、Hct、Plt、白血球分画
◎感染症検査:HBsAg、HCV抗体、TPHA、HIV抗体
◎画像検査:胸部X線、腹部単純写真、腹部超音波検査、IVP/DIP、腹部CT
【病理診断に必要な検査項目】
◎尿定性検査:pH、比重、蛋白定性、糖定性、潜血、ウロビリノーゲン、ケトン体
◎尿沈渣:赤血球、白血球、扁平上皮、異型細胞、円柱、結晶
◎尿定量検査:蛋白定量、糖定量、Na、K、Cl、UUN、Cr、UA
◎生化学検査:BUN、Cr、UA、Na、K、Cl、Ca、P、Mg、ALT、AST、ALP、LDH、γGTP、Cho、TG、CK、TP、Alb、蛋白分画
◎血清学検査:CRP、RF、ASO、ASK、IgG、IgA、IgM、C3、C4、CH50、ANA
◎血糖検査:FBS、HbA1c
◎腎機能検査:24時間蓄尿Ccr←H2-blockerは測定に影響する
◎細菌培養:扁桃培養または咽頭培養
【鑑別診断に必要な特殊な検査】
◎生化学検査:血清蛋白電気泳動(M蛋白血症)
◎尿定量検査:Ca、P、Mg、β2ミクログロブリン、NAG、リゾチーム、尿中アミノ酸分析(以上、尿細管障害)、ベンスジョーンズ蛋白、尿蛋白電気泳動(以上、M蛋白血症)、抗β2GPI抗体、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント(以上、抗リン脂質抗体症候群)、SI
◎血清学検査:抗dsDNA抗体、抗ENA抗体<抗Sm抗体、抗SS-A、抗SS-B、抗Scl70抗体、抗RNP抗体、抗Jo1抗体>(以上、膠原病)、MPO-ANCA、PR3-ANCA(以上、急速進行性腎炎)、抗GBM抗体(Goodpasture症候群)、クリオグロブリン
◎血糖検査:75gOGTT
◎腎機能検査:腎クリアランステスト(糸球体濾過量,腎血漿流量)
◎細菌培養:中間尿培養
◎画像検査:Gaシンチ, レノグラム
4/8 腎の探査法と生検針の選択
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
腎探査法は以前はX線(DIP)を使用したり、盲目的であったりしたがリスクが高く、現在は超音波が主流。
1) 超音波を用いる腎探査法
探査部位は腹臥位で背部正中より4横指外側。5MHz のプローブを用いて腎臓を探査する。腎皮質が多く採取されるため、穿刺部位はCECが描出されない腎下極外側とする。
2) 穿刺方向
腎生検の穿刺方向は、腎臓の尾側より頭側方向に、やや内側から外側方向にする施設が多い。しかし施設間でばらつきがある。守るべきこととして…、
① 腎臓の下極を穿刺する (大血管の多い腎臓中央部の穿刺は決して行わない)
② 腎臓を深く穿刺しない (髄質をあまり多く摂取しない)
③ 腎臓を穿通しない
3) 生検針の選択
生検針は、①オールディスポーザブルタイプ、②発射装置リユースタイプ、③自動式でない従来品に分類される。①は軽く操作がしやすく、生検針を固定する介助者が不要であり、確実に一人の術者で行える利点がある。またGerota 筋膜を貫くときや、腎実質に生検針が到達したときの感触を比較的よく感知でき、発射に際して穿刺部位のずれがない。年間100 例以上の生検症例がない施設ではオールディスポーザブルタイプの生検針は医療経済的にも有用であるかと考える。
4) 生検針の太さ
太ければ検体採取量が多いが危険性も高い。細ければその逆。現状では通常症
例では16ゲージ針で2~3回穿刺、危険度の高い症例(出血の危険性、重篤症例、萎縮腎傾向など)では18ゲージ針で2~3回穿刺が薦められる。
4/9 腎生検組織採取法と合併症対策
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
1) 穿刺部位の決定
患者には同じ深さで息を止める練習(腎臓の位置の再現性の確保)をしてもらう必要がある。穿刺針挿入予定部の皮膚面にはマーカーで印を付ける。
2) 局所麻酔
局所麻酔剤の量は1%キシロカイン10~20mlで穿刺針挿入予定部の皮膚と穿刺針挿入路に沿って皮下組織、筋層、腎周囲脂肪組織、腎被膜周囲の順に局所麻酔剤による麻酔を施行する。もし針先が腎被膜に到達すると腎の組織密度が高いために同じ注入圧でも麻酔剤の流入が悪くなる。呼吸を再開させると針が腎実質にまで刺入している場合は、腎の呼吸性移動に合わせて針が上下に大きく往復する。
3) 穿刺
生検針を刺入する前に皮膚切開をする。また自動生検装置を一度作動させて被検者に「カチッ」という音を聞かせて検査中に動揺しないように留意する。
腎表面まで穿刺針を進める。一定の進行速度で穿刺針を刺入すると、腎被膜が押されたように画像上の変化が捉えられる。自動生検装置を作動させると一瞬のうちに腎実質組織が採取される。穿刺針内の採取された腎組織は、生理食塩水を浸したガーゼに移して各固定まで乾燥を防ぐ。
4) 合併症対策
(a) 主な合併症
腎生検の合併症としては、肉眼的血尿、顕微鏡的血尿、腎周囲血腫、動静脈瘻、感染症、痛みなどが報告されている。血腫が0。89%、動静脈瘻が0。11%、感染症が0。18%、手術を必要とした症例が0。29%、死亡例は0。12%であった。
(b) 血腫、肉眼的血尿への対処
超音波や腹部CTで検索すれば生検後の出血はほぼ必発。あとは程度の問題。多くの場合は後腹膜腎周囲に血腫を形成して、自然止血し、吸収されて治癒にいたるが、血腫の増大傾向や痛みを伴うものはコイルによる塞栓術も必要となる。
血尿の原因は尿管の直接損傷あるいは腎実質内血腫からの間接的穿破。凝血塊を形成しないように輸液増量や膀胱内洗浄も考慮する。深部静脈血栓症にも注意が必要である(盲点!)。
(c) 生検後の安静期間
経過観察は24時間という施設が多いが、細い針であれば充分。太い針の場合は8時間では短いというデータがある。止血1~2週間後の後出血の危険性も説明し数ヶ月は激しい運動や労働を避ける。
製本後(2010.3.18~2010.4.6)
2010年10月2日3/18 後天性サイトメガロウイルス感染症による血小板減少性紫斑病を発症した低出生体重時の1例
(日本小児科学会雑誌 114巻4号)
後天性サイトメガロウイルス感染症は経母乳感染で多くは無症状が一過性の肝逸脱酵素の上昇が多い。筆者らは超低出生体重時が冷凍されていない母乳(直母)によって顕性の後天性サイトメガロウイルス感染症を発症し、更にそれによる免疫性血小板減少性紫斑病を併発したと考えている。診断は血小板関連IgGと骨髄検査による巨核球数増加、血小板付着像の消失である。
アメリカ小児科学会では低出生体重児や早産児には母乳は冷凍してから与えることを推奨している。命あっての…、と考えれば、愛着形成も大事だが感染症から児を守ることも小児科医の勤めなのかもしれません。
3/19 Refeeding syndromeにたこつぼ型心筋症を合併したanorexia nervosa
(日本集中治療医学会雑誌 17巻2号)
Refeeding syndromeは長期間にわたる栄養摂取不良状態であった患者に急激に栄養を摂取させることによって、体液、電解質(リン、カリウム、マグネシウム)が細胞内に急激に移行し、脱水、低P血症、低K血症、低Mg血症を発症する疾患である。著者らは18歳女性で163cm、27kg(病前は55kg)の患者に13.1kcal/kg/dayの栄養投与量ではRefeeding syndromeを発症してしまい更に栄養投与量を控えるように注意を喚起している。具体的な数字が述べてあってありがたい。
たこつぼ型心筋症の診断基準は…、
①急性心筋梗塞に類似した発症経過
②急性期に左室造影や超音波で左心室心尖部の低収縮と心基部の過収縮
③収縮異常は2週間以内に劇的に改善
④心収縮異常域は一枝の支配領域をこえる
⑤責任病変と妥当な冠動脈に器質的病変を示さない
ついでにたこつぼ心筋症は60%にST上昇と、改善後の陰性T波を認めるらしい。
3/20 甲状腺クリーゼと診断した4例の検討
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17)
甲状腺クリーゼは「治療コンプライアンスが悪い甲状腺機能亢進症」が長期間にわたって存在し、そこに「誘発因子」が加わることによって起こる。
甲状腺クリーゼ=「治療コンプライアンスが悪い甲状腺機能亢進症」+「誘発因子」
誘発因子の多くは感染!それ以外にも自己断薬、外傷、甲状腺への直接的な外力の存在が挙げられる。症状は①高体温、②頻脈、③中枢神経症状(動悸、興奮、痙攣、昏睡)、④消化器症状である。治療におけるβ遮断薬やCa拮抗薬、利尿剤の投与は循環動態の厳重なモニター下で投与する必要がある。また外傷患者が持続的に高体温、頻脈を認めることがあるが、その際にも甲状腺クリーゼを鑑別する必要を筆者らは唱えている。
相対的副腎不全…、あったな~。なんだっけ!?
診断基準はBurchらの診断基準がよさそう。
3/21 アナフィラキシーショックの治療にβ遮断薬が影響を及ぼし心肺停止に陥った1症例
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17)
成人領域でアナフィラキシーショックにはエピネフリン0.3~0.5mg筋注あるいは0.1mg静注ということ自体が初耳。この効果がβ遮断薬内服により阻害されるという趣旨。また抗ヒスタミン薬であるH2-blockerはβ遮断薬の代謝を遅らせるので使用しないという。う~ん、奥が深い。
蜂刺傷には蜂毒による直接的作用とアナフィラキシーがあり、蜂毒成分にはヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、ノルエピネフリンなどのアミン類が含まれ冠血管を攣縮させる作用があるらしい。
3/22 たこつぼ心筋障害
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17巻)
定義としては以下の4つ。
①急性心筋梗塞に類似した胸痛と心電図変化を有する。
②それに伴う左心室の壁運動異常が一つの冠動脈の支配領域を越えて広く存在し、左室造影にてあたかも“たこつぼ”を思わせる形態を呈する。
③冠動脈に有意狭窄を認めない。
④急性期に見られた壁運動異常が数日で回復し、数週間後にほとんど正常化する。
STEMIと鑑別が重要!
3/23 甲状腺クリーゼの診断基準と全国疫学調査
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17巻)
診断基準は以下のよう。
定義
甲状腺クリーゼとは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これになんらかに強いストレスが加わったときに、甲状腺ホルモンの作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう。
必須項目
甲状腺中毒症の存在(fT3 or fT4が高値)
症状
1:中枢神経症状(不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡、JCS≧1、GCS≦14)
2:発熱(≧38℃)
3:頻脈(≧130/min)
4:心不全症状(NYHAⅣ度、Killip分類≧Ⅲ度)
5:消化器症状(嘔気・嘔吐、下痢、黄疸)
確実例
必須項目および以下を満たすもの。
a)中枢神経症状+他の症状項目1つ以上
b)中枢神経症状以外の症状項目3つ以上
疑い例
a)必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ
必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫が存在し、確実例のa)またはb)を満たすもの
3/24 体温上昇と横紋筋融解、そして悪性高熱症との鑑別診断と治療
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17巻)
体温上昇にも発熱と高体温がある。発熱は体温のセットポイントが高温側に推移し、体温上昇→代謝亢進である。具体的な例としては感染があり解熱薬で解熱する。高体温は代謝亢進→体温上昇で、具体的には運動、うつ熱、甲状腺クリーゼ、悪性高熱症などで解熱剤で解熱しない。
悪性高熱症は高体温であり、最初に代謝が亢進する症状が出現する。例えば筋症状、循環器系の症状(頻脈、不整脈、血圧不安定など)、自発呼吸の出現、ソーダライムの青変などの二酸化炭素酸性の増加、酸素消費量の増加によるチアノーゼの出現、交感神経系の活動亢進による発汗の亢進などである。近年、悪性高熱症の高K血症にはGI療法は高血糖による脳血管および脳組織障害の可能性を危惧し炭酸水素Na投与が推奨されている。また悪性高熱と鑑別を要する横紋筋融解、シバリング、甲状腺クリーゼであってもダントロレンは悪い方向には働かないので投与しない理由はないと筆者は書いている。
3/25 胸椎部巨大髄膜瘤および左肺無形成を合併したJarcho-Levin症候群の1例
(日本周産期・新生児医学会雑誌 46巻1号 2010)
こんな症候群初めて知った。Jarcho-Levin症候群。躯幹短小型小人症を呈する多発脊椎肋骨奇形症候群らしい。予後良好な脊椎肋骨異形成症と、予後不良な脊椎胸郭異形成症があるらしい。
①特徴的な多発脊椎奇形および肋骨の欠損や融合による胸郭形成不全
②肺および腎の形成異常
③神経管閉鎖不全
④四肢、手指の異常など
PPHNで苦労しているのは言うまでもない。
3/26~4/4 Conventional and chest-compression-only c
(Lancet vol375 April17, 2010)
成人にしか推奨されていない胸骨圧迫のみのCPRを小児に適応できるかの検討だった。院外心停止の17歳以下の小児5170人を対象としている。非心原性心停止3675人、心原性心停止1495人であり、1551人が通常のCPR、888人が胸骨圧迫のみのCPR、2719人がCPRを施行されていない。
CPRの有無において神経学的予後の改善にOR 2.59の差を認めている。更に1~17歳の非心原性心停止の小児ではCPRの有無において神経学的予後の改善にOR 4.17と著明な差を認めている。標準的なCPRは胸骨圧迫のみのCPRよりも神経学的予後が良いことが分かった(OR 5.54)。心原性心停止の小児でもCPRの有無において神経学的予後の改善にOR 2.21と差を認めていが、標準的なCPRと胸骨圧迫のみのCPRとの間では差を認めなかった。1歳未満の予後は軒並み悪かった。
つまり小児でもあっても心原性の心停止の場合は胸骨圧迫のみのCPRが標準的なCPRに劣らないことがわかった。
賞賛に値するデータだが、実際問題心原性か非心原性かを見分けるのは用意ではない。小児では非心原性が多いことも加味するとこれまでの対応と大きくは変化しないのかもしれない。
4/5 腎生検の適応と禁忌
(日本腎臓学会雑誌 47-2 73-75 2005)
腎生検が適応となるのは、①検尿異常、②ネフローゼ症候群、③急性腎不全、④移植腎などで、禁忌は①出血傾向、②機能的片腎、③萎縮腎、④管理困難な高血圧であるが絶対的なものではない。
(1)適応
①検尿異常
・ 血尿のみ…程度が強い場合や変形赤血球を認める場合は考慮。しかし尿路系の疾患の鑑別を忘れない(腫瘍、結石、感染症)。
・ 蛋白尿のみ…定性で(+)~(2+)が持続する場合や1日蛋白尿0.3~0.5g/日以上、あるいは尿蛋白/Cre比0.3~0.5以上の場合は考慮する。また社会的適応も存在する。
・ 血尿・蛋白尿…糸球体疾患の可能性が高い。赤血球円柱を認める場合は腎炎の活動性が高い可能性がある。
②ネフローゼ症候群
糖尿病性腎症による二次性のネフローゼ症候群以外が適応。また糖尿病であってもその病期に相応しくない時期のネフローゼ症候群は腎生検を考慮する。
③急性腎不全
急速進行性糸球体腎炎では治療方針決定の上で重要。また急性尿細管壊死で腎機能の回復が遅延する場合も回復を予測する上で腎生検は重要。
④全身性疾患に伴う腎病変
SLE、多発性動脈炎、Goodpasture症候群、Wegener肉芽腫、紫斑病性腎炎、多発性骨髄腫、アミロイドーシス、クリオグロブリン血症などで腎生検は重要。
⑤移植腎
単一機能腎で唯一生検が適応になる。拒絶反応の有無を鑑別する上で非常に重要。移植直前や血流再開1時間後の生検の必要性については議論が分かれる。
(2)禁忌
管理困難な出血傾向…HUSでは血小板輸血を施行して生検をすることもある
腎の数・形態の異常(機能的片腎、馬蹄腎)
嚢胞腎(大きな単嚢胞、多発性嚢胞腎)…嚢胞が下極にある場合
水腎症
管理困難な全身合併症(高血圧、敗血症)…治療を優先
腎実質内感染症(急性腎盂腎炎、腎周囲膿瘍、膿腎症)
腎動脈瘤
末期腎(高度の萎縮腎)…長径8~9cm未満あるいは3椎体未満
4/6 腎生検におけるインフォームド・コンセント
(日本腎臓学会誌 47巻 2005)
インフォームド・コンセントは「不確実性を患者と共有する」ことである。乳幼児であれば、全身麻酔下での検査となるので保護者への説明がさらに重要になる。全国集計の結果では、輸血や外科的処置を必要とする人は、1,000 人あたり2 人程度となっているので、腎生検実施前に輸血に関する説明と同意を得ておく必要がある。
(1)腎生検の目的
診断を確定すること、予後を推測すること、治療法を決定すること
(2)腎生検の説明
採取する組織は鉛筆の芯くらいの太さで長さは1~2cm、採取後は5~10分圧迫し、生検後は6~12時間安静にする。超音波ガイド下の腎生検よりは開放腎生検の方が出血や輸血のリスクは低い。また肥満体形の方、筋肉質のスポーツマンでは腎臓の位置が確認しにくいことがあり採取が困難なこともある。数回穿刺して採取できない場合は、生検を中止する可能性もある。採取できなかった場合、あるいは採取はできたが最も必要な糸球体が含まれていない場合は、再度検査予定を立てるか開放腎生検を行うか、あるいは腎生検を行わないかを判断する。
(3)腎生検の合併症
年間約10000人の方が腎生検を受けている。
◎出血:20/1000
◎輸血あるいは外科的処置:2/1000
◎死亡:1/15000
(4)腎生検後の安静
検査終了後6 時間は仰臥位で穿刺部位に砂嚢をあて、絶対安静とする。12 時間の安静が必要。検査後、最初の尿が肉眼的血尿でなければ安静を解除する。血尿の場合は、血尿が消えるまで安静入院。腹圧をかける動作(しゃがんだ姿勢での排便、重い荷物を持ち上げる)や、激しい運動は2~3週間は避ける。また安静しすぎると深部静脈血栓、肺塞栓の危険性が増す。
製本後(2010.3.7~2010.3.17)
2010年10月2日3/7 初心者のための腎臓の構造
(日本腎臓学会誌 2001 43(7) 572-579)
1. 腎臓の性格と容貌
腎動脈が入り込み、腎静脈と尿管が出てくる腎臓の凹んでいる部分を腎洞と呼び、腎組織は皮質と髄質に分かれる。髄質には円錐形の腎錐体という組織が十数個存在し、その腎洞側の頂点を腎乳頭と呼ぶ。腎錐体とその先の皮質組織を腎葉と呼ぶ。腎葉はヒトには十数個存在するがラットなどの小動物では1個しか存在しない。
2. 皮質と髄質の構築
1) 腎臓の実質構造
まず皮質と髄質に分かれる。皮質は糸球体や迂曲する尿細管の存在する皮質迷路と髄質的な直走する尿細管の存在する髄放線がある。髄質は外帯(外層)、内帯(外層)、内層に分かれ、その中を尿細管が1往復半する。皮質→髄質→皮質の1往復がヘンレループで、残りの皮質→髄質が集合管である。外帯は下行脚の近位尿細管と上行脚の遠位尿細管、内帯は下行脚の細い中間尿細管と上行脚の遠位尿細管、内層は下行脚と上行脚ともに細い中間尿細管から成る。
2) 腎臓の血管系
心拍出量の20%は腎臓が享受する。糸球体濾過量は100~150ml/minで、180l/dayにも及ぶ。尿細管では濾過量の99%が再吸収され、尿として排泄されるのは1.5lである。腎動脈から入って腎静脈から出るまでに血液は2回毛細血管網を通過する。糸球体毛細血管と尿細管周囲毛細血管であり、その間に輸出細動脈がある。輸出細動脈にはそれなりの血管抵抗があり糸球体内での血圧を他の毛細血管よりも約50mmHg高く維持している。
3. 糸球体
1) 糸球体の構造
糸球体は毛細血管の糸玉である。それをボウマン嚢が取り巻き、その糸球体とボウマン嚢が構成するものを腎小体(マルピギー小体)と呼ぶ。ボウマン嚢には糸球体が出入りする血管極と近位尿細管につながる尿細管極がある。糸球体毛細血管を構成する内皮は、その周の一方の側でメサンギウムという結合組織に接する。この毛細血管とメサンギウムを基底膜と足細胞の層が取り囲んでいる。毛細血管の血液はメサンギウムと接する部分を除けば内皮細胞、基底膜、足細胞を隔ててボウマン嚢と接しており、この内皮細胞、基底膜、足細胞の層を濾過障壁と呼ぶ。糸球体の再外層は足細胞で構成され、それは血管極においてボウマン嚢を構成する壁側上皮細胞と連続している。
2) 濾過障壁
前述したように3つの細胞からなる。足細胞の足突起は基底膜全体を覆っているが、その突起と突起の間の底部を形成するスリット膜はタンパクを通過させない。このスリット膜を形成するタンパク(ネフリン)に先天的な異常を認めると、先天性ネフローゼ症候群を発症する。基底膜の主要成分はⅣ型コラーゲンで負に帯電している。
3) 基底膜とメサンギウム
前述したように糸球体の内部には50mmHgの圧がかかっており、その圧に内皮や基底膜耐えられるように支えているのが豊富なアクチン線維を持つメサンギウム細胞である。
4. 尿細管
尿細管は皮質迷路で迂曲し、髄放線から髄質の中を1往復し、再び皮質迷路で迂曲し、髄質を貫いて乳頭に向かう。
1) 近位尿細管
近位尿細管は内腔側に長い微絨毛が密に集まった刷子縁を備えるのが特徴。また基底膜側は多数の細胞突起を突き出し、隣接する細胞同士で絡み合って細胞嵌合を形成する。近位尿細管は内部に多数のミトコンドリアを持ち、濾過量の50から75%を再吸収する。
2) 中間尿細管
3) 遠位尿細管
太い遠位尿細管は直線的に髄質から皮質に向かい、もとの糸球体の血管極に接する部位を過ぎると迂曲する。
5. 傍糸球体装置
糸球体から出た尿細管はヘンレループを経て再びもとの糸球体の血管極に戻り、糸球体に出入りする細動脈に接触する。この同一ネフロンにおける尿細管と糸球体の接触部分を傍糸球体装置と呼ぶ。
① 遠位尿細管の緻密斑(macula densa)の細胞
② 輸入細動脈の平滑筋細胞
③ 輸入細動脈の顆粒細胞
④ 輸出細動脈の平滑筋細胞
⑤ 両細動脈と緻密斑に挟まれた糸球体外メサンギウム細胞
傍糸球体装置の機能は2種類ある。第1の機能は尿細管糸球体フィードバックである。遠位尿細管を通る尿流量によって糸球体濾過量を調節している。その機能の入力は尿中塩素イオン濃度、出力は輸出入細動脈の血管抵抗である。第2の機能はレニンの分泌である。レニン分泌は輸入細動脈の顆粒細胞がする。その機能の入力は輸入細動脈の顆粒細胞の伸展(=血圧)である。伸展力が低下すると顆粒細胞がレニンを分泌する。レニンはタンパク分解酵素で血漿中のアンギオテンシノーゲンを分解しアンギオテンシンⅠを産生し、アンギオテンシンⅠは主に肺の血管内皮細胞が持つ転換酵素によってアンギオテンシンⅡになる。アンギオテンシンⅡは全身の血管平滑筋を収縮させて血圧を上昇させ、副腎皮質に作用してアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは集合管に作用しNa再吸収とK分泌を促し体液量を増加させる。
3/8 酸塩基平衡
(日本腎臓学会誌 2001 43(8) 621-630)
細胞外液をpH = 7.40±0.05という狭い範囲に調整しているのは肺と腎臓。特に腎臓は酸を排泄しHCO3–を産生する点において重要な役割を担っている。酸とはH+を放出し、塩基とはH+を受け取るものである(Bronstedの定義)。細胞内のpHはほぼ中性の7.00に保たれていて、細胞外液のpHは7.40と若干アルカリ性に傾く。これは細胞内で産生される有害代謝産物のほとんどが酸性であることを考えるとその有害代謝産物の移行の際に有利である。
体内で産生される酸は以下の2種類がある。
1) 不揮発性酸:食事や細胞代謝によって産生され(約1mEq/kg/day)、腎から排泄
2) 揮発性酸:細胞呼吸でCO2として産生され(15000~20000mEq)、肺から排泄
細胞外液のpHの変動を少なくする為に生体には様々な緩衝系がある。炭酸–重炭酸や血漿蛋白系、ヘモグロビン系があり、細胞内の緩衝系としてはリン酸系が有名。緩衝系は弱酸と弱塩基によって構成される。
肺胞の数は約3億個、広さは3LDKくらいである。吸気による酸素の量は250ml/min、呼気による二酸化炭素の量は200ml/minであり、吸気量>呼気量である。
腎臓はH+を排泄しているがその方法は主に3つ。特に重要な役割を果たしているのがアンモニウム排泄である。これらは主に近位尿細管で以って成され、遠位尿細管におけるH+分泌は微調整である。
pH = 6.1 + log[HCO3–] / 0.03×pCO2
アシドーシスは血液を産生にするような病態の存在を示し、アルカローシスはその逆。アシデミア、アルカレミアは実際に血液が酸性やアルカリ性に傾いている状態。代謝性アシドーシスの場合はアニオンギャップを計算し、開大していれば更に⊿gapを計算する。⊿gapも正常でない場合はその他の酸塩基平衡障害を合併している可能性が高いので評価が必要。更にそれぞれの代償が適切がどうかも評価が必要である。
呼吸性アシドーシス
急性
⊿pH = 0.08 × ( PaCO2 – 40 ) / 10
⊿HCO3– = ( ⊿PaCO2 ± 3 ) / 10
慢性
⊿pH = 0.03 × ( PaCO2 – 40 ) / 10
⊿HCO3– = 3.5 × ⊿PaCO2 / 10
呼吸性アルカローシス
急性
⊿pH = 0.08 × ( 40 – PaCO2 ) / 10
⊿HCO3– = 2 × ⊿PaCO2 / 10
慢性
⊿pH = 0.03 × ( 40 – PaCO2 ) / 10
⊿HCO3– = 5 – 7 × ⊿PaCO2 / 10
代謝性アシドーシス
PaCO2 = 1.5 × HCO3– + 8 ± 2 または ⊿PaCO2 = 1.2 × ⊿HCO3–
代謝性アルカローシス
⊿PaCO2 =0.6 – 0.7 × ⊿HCO3–
3/9 常染色体性Alport症候群
常染色体性Alport症候群
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
Alport症候群の頻度は5000人に1人、末期腎不全患者の0.3~2.3%を占める。原因は全身に広く分布する4型コラーゲンのα鎖の異常である。感音性難聴を合併することもある。
光学顕微鏡所見では特異的な所見はないが、軽度のメサンギウム増殖の所見として分節性巣状糸球体硬化、半月体形成などがある。
蛍光染色ではIgAがメサンギウム領域に沈着することがIgA腎症と診断されてしまうこともある。
電子顕微鏡所見では、唯一の特徴的な所見として、糸球体基底膜の不確実な菲薄化や肥厚を認める。
抗4型コラーゲン抗体を用いた免疫染色では以下のようになる。
1) X連鎖性Alport症候群(約85%):男性では陰性、女性ではモザイク
2) 常染色体劣性Alport症候群(約15%):男女ともにボーマン嚢のみ陽性
このヘテロ接合体が良性家族性血尿と考えられる。
3) 常染色体優性Alport症候群および正常:糸球体基底膜もボーマン嚢も陽性
3/10 Nephropathy in cyanotic congenital heart dise
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
初めてこの概念を知った。
機序は低酸素血症による多血症の結果、血液の粘調度が亢進し、糸球体内圧が上昇し、毛細血管の拡張や糸球体の腫大を生じることが主な病態らしい。抗血小板薬やレニン・アンギオテンシン系阻害剤の投与が有効らしい。
筆者らは右→左シャントによる巨核球の動脈血への迷入から糸球体での巨核球および微小血栓、血小板活性化、糸球体内増殖性病変の機序を唱えている。
レニン・アンギオテンシン系阻害剤の投与の目安は尿蛋白1g/day以上らしい。
根治をすれば糸球体病変は可逆的なのかが疑問。尿酸クリアランスも勉強せねば!
3/11 ステロイドパルス療法後に急性膵炎、十二指腸穿孔性腹膜炎、PRESを合併したMPO-ANCA
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
国家試験以来だ。ANCA関連血管炎。筆者らは関節痛があったからANCAを採血したのか?あまりしない検査なのでしっくりこない。腎機能の悪化から腎生検、そして壊死性半月体形成性腎炎ありステロイドパルスに移行している。
小児科領域で急性膵炎を合併するのはアレルギー性紫斑病、全身性エリテマトーデス、川崎病などの血管炎を呈するものが多い。何か関連があるのか?
自己免疫性膵炎とIgG4との関連についても勉強不足な僕でした。
3/12 学童期に蛋白尿を指摘された超低出生体重児の1例
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
低出生体重児が成人期に俗に言う成人病…、高血圧、糖尿病、高脂血症等を患いやすいことは有名。この報告は在胎25週1日、624gで出生した児が、就学時の検尿で蛋白を指摘され、以後経過観察していたが増量してくるので9歳になって腎生検したというもの。
その結果、児の糸球体は硬化等の異常は見られなかったが、糸球体面積が平均以上であった。まずBokyungらが報告した年齢相当の腎臓の大きさについて…、知らない。ついでに宇南山らが報告した9歳の糸球体平均面積について…、知らない。1998年のHaycockらの報告で糸球体は28~36週までに全体の約60%が形成され、36週以降は新たな糸球体の形成はないらしい。早産ではその週で形成がstopしてしまうってことか…。
筆者らの「早期の介入」ってのはどうするんだろう。
3/13 寛解療法導入中に深部静脈血栓症を併発したステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の1例
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
ネフローゼ症候群は下記の理由から「過凝固」になりやすい。
・尿中へのアルブミン喪失による血管内脱水
・AT-Ⅲ低値
・フィブリノゲン高値
・コレステロール高値 ステロイド投与
・腎生検等を行う際の術前抗凝固療法の中断
3/14 血漿交換療法が奏功した巣状分節性糸球体硬化症の1例
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.23 No.1)
巣状分節性糸球体硬化症はステロイド抵抗性を呈することも多く、30~50%が腎不全に移行する予後不良な病態。腎移植を受けた患者の30~40%に再発を認めることから、何らかの液性因子の存在が疑われているらしい。
3/15 シプロフロキサシンが有効であったサルモネラ髄膜炎の新生児例
(日本小児科学会雑誌 114巻4号)
新生児の髄膜炎の原因菌でサルモネラってあんまり考えないよな~。俺はこの症例ですぐに髄液検査をしようと思えるか自信がないが…、するよな~。哺乳力低下、嘔吐、活気不良、不機嫌、白血球2400/μlである。ちなみにCRP 3.56mg/dl。
治療はABPC+CTXと標準的なもの。加えてDEXと免疫グロブリン製剤を施行。感受性試験の結果を待ってABPC→MEPMへ。発熱が持続しMEPM→CPFXへ。CTXはCPFXとの併用の有効性を報告する文献があったらしく併用。ここは実際のところどうなんでしょうか??
乳児のSalmonella属による髄膜炎の予後は非常に悪いようだ。非チフス性Salmonella属は家畜、家禽、野生動物の腸管に保菌されているために鶏卵、鶏肉、その他の腸内容物で汚染された食品などを介したり、ペットの排泄物から直接ヒトに感染を起こすとされている。感染源の動物としては、インコやカモなどの鳥類、カメ、イグアナ、ヘビなどの爬虫類やカエルなどの両生類が知られている。
CPFXの副作用については使用したことがないので僕は知らん。
3/16 後腹膜鏡下腎生検を実施した2小児例
(日本小児科学会雑誌 114巻4号)
Body mass index 34.7ってことで肥満が原因で全身麻酔に至っているのに麻酔の重症加算はとれず。出血傾向という経皮的腎生検の相対的禁忌が存在する状況でも直視下に止血を確認すれば安全にできるという報告。
3/17 デスモプレシン投与前後の哺乳量制限により血清Na値をコントロールできた中枢性尿崩症の乳児例
(日本小児科学会雑誌 114巻4号)
自分で飲水をコントロールできる年長児や成人の中枢性尿崩症はDDAVP点鼻と口渇感にあわせた飲水でNaのコントロールをすることは比較的容易らしい。
しかし新生児、乳児ではDDAVP点鼻後の水中毒で死亡例も報告されていることから、DDAVPの効果が切れる時間帯を作るように投与量を設定することが重要なようだ。患児は下垂体機能低下症で中枢性尿崩症なのであり、他のホルモンの投与も必要であった。
・ハイドロコルチゾン:25mg/m2静注後、80mg/m2/dayを持続投与
・l-サイロキシン:3.7μg/kg/day
・GH:0.1mg/day
患児は口唇口蓋裂もあり点鼻が不可能であり舌下投与されている。DDAVPは口腔(口唇と歯肉の間)、膣内投与の有効性の報告もある。投与量は舌下投与は点鼻に比べて1/12でいいとする報告から1~2倍が必要とされる報告まで多々。少ない量から開始するほうが水中毒のリスクは低くなるだろう。筆者らはDDAVPを投与する前後の哺乳量を制限することによりNa変動を最小限に抑える努力をしている。夜中に採血したと思われる筆頭著者たちに敬意を表したい。
製本後(2010.1.20~2010.2.13)
2010年10月2日1/20 経皮的腎砕石術後に敗血症性ショックと急性呼吸促迫症候群をきたした1例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 295-98)
経皮的腎砕石術(percutaneous nephrolithotripsy:PNL)の合併症として敗血症性ショックがあるというもの。術後の低血圧は出血も考えるがshockも考えなさいという文献。
透析にQb 100ml/hr、Qd 2000ml/hrはさすが成人。
1/21 腎不全を回避できた著しい横紋筋融解症の2症例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 299-303)
血清CK値が必ずしも横紋筋融解症の予測因子にならないという文献。しかしこれまで50000U/l以上が多くは腎不全を発症すると言われていたことすら知らなかった。勉強不足。治療は輸液(8~12l/day)と尿のアルカリ化である。詳細はいつか記載することになるだろう。
1/22 免疫抑制療法中に壊死性筋膜感染症による敗血症ショック、多臓器不全から救命できた1症例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 305-6)
壊死性筋膜炎は、Ⅰ型(好気性・嫌気性菌の混合感染)とⅡ型(A群StreptococcusやMRSAに合併)に分けられる。治療はABPC or SBT/ABPC & CLDM併用療法かPCG & CLDM併用療法が推奨されている。全く知らなかった。
1/23 褐色細胞腫摘出術後に著明な低血糖を呈した一例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 307-8)
摘出すると低血糖が出現するというのは注意。こまめな血糖チェックが必要だ。原因は、
① 腫瘍から分泌されるカテコラミンによるα2作用(インスリン分泌抑制)の消失
② 腫瘍摘出後のカテコラミン消失によるグリコーゲン分解と糖新生の抑制
③ 術前の高血糖によるグルカゴン作用の抑制
1/24 中心静脈カテーテル抜去後に乳び胸を発症した先天性心疾患の1症例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 307-8)
乳び胸は治療に難渋することが多い。この症例はミルク栄養を中止し静脈栄養に戻すことによって白濁が消失し、中鎖脂肪酸ミルクを開始し寛解した。
1/25 胸腹部大動脈瘤切除術後に急性膵炎を併発した一例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 315-16)
胸腹部大動脈瘤の術後合併症は、術前腎不全、高齢、巨大動脈瘤、破裂などで頻度が高くなる。膵炎は0.3~1.8%の頻度で稀ではあるが発症すると予後は悪い。
血圧の維持にバゾプレッシン4単位/hr、尿量維持に0.02μg/kg/minを使用している。量を参考までに記載させてもらった。
1/26 静脈血ガス分析と循環管理
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 237-9)
Fick法の原理を理解する時に非常に重要な考え方が述べてある。引用すると「ある臓器における物質の取り込みあるいは排出量がその物質の含量の動静脈較差と血流の積で規定される」というものである。
心拍出量=O2消費量/(動脈血O2含量-混合静脈血O2含量)
同様に…、
肺血流量=CO2呼出量/(混合静脈血CO2含量-動脈血CO2含量)
混合静脈血CO2含量-動脈血CO2含量=CO2呼出量/肺血流量
CO2はO2と異なり、含量と分圧に直線的関係が存在し、以下のように近似できる。
混合静脈血CO2分圧-動脈血CO2分圧∝CO2呼出量/肺血流量
結論的には「CO2分圧動静脈較差が開大している場合には低拍出状態を疑う」というくらいであろう。今後の発展が期待できる検討ではあった。
1/27 横紋筋融解症の病態と臨床
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 242-45)
ミオグロビン(Mb)の豆知識。分子量7500、正常値は血中60~80ng/ml、尿中≦12ng/mlであり、尿中では数百ng/mlを超えると肉眼的に識別可能になるらしい。
HMG-CoA還元酵素阻害剤で横紋筋融解症が起こりうることは知らなかった。
治療は…、
①薬剤性の場合は原因薬剤は中止する。
②血清CK>10000U/mlでは生理食塩水による積極的な輸液
③尿のアルカリ化(pH≧6.5)
④尿を酸性化するフロセミドの投与は注意!
1/28 壊死性皮膚筋膜感染症に対する集学的治療
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 245-7)
壊死性皮膚筋膜感染症に今後血液浄化が積極的に試みられるかもしれないという記載があった。CHDF、PMX-DHP、PEなどが過去に紹介されている。
1/29 肥満低換気症候群の急性呼吸不全に対する非侵襲的陽圧換気法の経験
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 477-80)
はやりのNPPV。BiPAPの基本設定は、S/Tモードで吸気気道陽圧 10~20cmH2O、呼気気道陽圧 4~6cmH2O、FIO2 0.5~0.7、呼吸回数 10~20/minであった。
1/30 持続的血液濾過透析を行った臨床的羊水塞栓症の1例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 501-2)
羊水塞栓症は母体血中に流入した羊水成分が肺血管を閉塞したり、血管攣縮を惹起したり、肺から放出された炎症性物質による血管透過性の亢進による心肺機能障害が病態である。リスクファクターは帝王切開やアレルギーである。
治療にCHDが有効かも知れない。
1/31 骨髄針の正しい知識と使い方
(レジデントノート Vol.9 No.9 2007)
骨髄路のエビデンスとしては、蘇生初期の検体(血液型、クロスマッチ、血液ガス、生化学)が採取できる。禁忌は骨折部位、挫滅部位、一度穿刺した骨、骨系統疾患がある。穿刺方法としては、脛骨近位内側を触診して平坦な面(脛骨粗面)を確認し、成長板の損傷を防ぐために脛骨結節よりも1~3cm遠位をやや下方に傾けて穿刺する。
2/1 羊水塞栓症に対する新しい治療の可能性
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 501-2)
非常に興味深いが濾過膜では羊水成分を除去できない。濾過膜で濾過や拡散ができるのは20kDa程度らしい。サイトカインが除去できるというセオリーなら信用できそう。今後はサイトカイン吸着カラム、PMMA膜が有効性を発揮するかもしれない。
2/2 気管支喘息発作とその対応
(日本小児科学会雑誌 114巻1号 23-30 2010)
Carrollらが提唱している修正版Pulmonary index scoreが9点以上の場合にその後の入院の予見が可能であるというのは勉強になった。文献から足立先生が改変引用したものを引用する。
文献とは、Carroll CL, Sekaran AK, Lerer TJ, et al. A modified pulmonary index score with predictive value for pediatric asthma exacerbations. Ann Allergy Asthma Immunol 2005; 94: 355-359である。
2/3 ADH高値を示し低Na血症を認めた多飲習慣性患児の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻8号 1247-51 2009)
多飲による低Na血症でADHが高値を示している例。非常に珍しい。水分制限とNaの補正が治療の主体となる。
2/4 非医療従事者による心肺蘇生および自動体外式除細動器により救命しえたFallot四徴症心内修復
(日本小児科学会雑誌 113巻7号 1123-7 2009)
バイスタンダーによるCPR&AEDの重要性を示した貴重な報告。それもそうだが、Fallot四徴症の術後の長期予後について、Gatzoulisらは心室性不整脈と突然死の関連を示唆するとともに心室性不整脈の発生は手術年齢と相関があり、心内修復が高年齢であるほど突然死の発生率も高くなると報告。また致死性心室性不整脈の予測因子について、心電図におけるQRS時間と右心室の慢性的な容量負荷との関係を示した。特にQRS時間が180msec以上をハイリスクとしている。
2/5 巨大卵巣成熟嚢胞奇形腫により両側閉塞性腎症を呈し腎機能低下にいたった1例
(日本小児科学会雑誌 113巻7号 1133-6 2009)
腹痛の鑑別診断。やっぱ両側性水腎症がある場合は、尿管や尿道の圧迫をきたしうる腫瘤性病変を疑わないといけない。
2/6 急性呼吸急迫症候群を合併したインフルエンザ脳症の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻4号 717-21 2009)
インフルエンザ脳症の治療にはいろいろな意見があり未だ評価が定まっていないという感じがする。この患児の循環動態が変動した際に輸液の負荷を60ml/kg以上しているのはやはり「それくらいはいるんだな~」という印象。10ml/kgや20ml/kgで循環が立て直せるとは思えない。その量でトライして以後も投与を続けるというほうが正しいと思う。
2/7 溶血性尿毒症症候群を合併し持続的血液濾過透析が著効した肺炎球菌性髄膜炎の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻4号 722-26 2009)
浜松医科大学の永田先生の報告。腸管出血性大腸菌以外でHUSをきたした症例報告を初めて読んだ。単に勉強不足名だけ。国家試験的ではあるがHUSの3徴は溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全である。血液浄化は身長76cm、体重11.3kg(発症前9.7kg)の児に対し、vascular accessはユニチカUKカテーテル6Frを右大体静脈に挿入し、血液流量は15~20ml/minを確保している。
2/8 クロラムフェニコールが著効した硬膜下膿瘍合併化膿性髄膜炎の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻4号 727-9 2009)
京都府立の山下先生の文献。クロラムフェニコールは髄液移行性が良好であるが、副反応として血液障害とGray baby syndromeが有名。血液障害は2タイプあり投与中に発症し投与量依存性であるタイプと投与中止後に発症する投与量非依存性の再生不良性貧血がある。
硬膜下膿瘍に対するCPの有用性は話題になっているのかな?
2/9 劇症型A群レンサ球菌感染症―その疾患概念について
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 4~6)
学生のころからトキシッキショック様症候群(toxic shock-like syndrome:TSLS)、レンサ球菌トキシックショック症候群(streptococcal toxic-shock syndrome:STSS)は苦手だった。とにかく覚えにくい!それがブドウ球菌のToxic shock syndrome(TSS)に似せた感じで命名されたことはよくわかるが、よく理解できていない。というかこの命名の方法自体がその疾患概念を分かりにくくしていると書いてあった。
特に注意すべきすべきことは、レンサ球菌のTSLSはブドウ球菌のTSSがブドウ球菌の毒素(toxin)が原因であるのに対し、菌が証明される必要があるということだ。むしろ敗血症としての病態が主と考えられているようだ。いずれにせよ「劇症型」も「TSLS」も以下の3項目が大きな柱になっている。
① 菌の検出
② 血圧低下
③ 複数臓器障害
2/10 小児の脳低温療法:エビデンスの日蔭における葛藤
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 9~10)
記載のあった事実を箇条書きにする。
①脳低温療法は唯一、新生児脳症と成人の蘇生後脳症において、有効な治療法として認識されつつある。
②低体温麻酔などの予防的低体温と異なり、受傷後に脳を冷却する場合には、安全冷却温度域は非常に狭く、一般に32℃を下回る温度域では、合併症が脳保護効果を上回ることが危惧されている。
③病態を問わず、脳低温療法は最重症例には無効であることが、多方面から報告されている。
④新生児脳症において、10℃超の局所脳温の差が生じると予想される全身冷却と頭部冷却が、ほぼ同等の予後改善効果につながっている。
脳低温療法を施行する患者を搬送する際は体温を上げないように搬送した方がよさそう。早く冷やした方がいいだろうからだ。
2/11 重症患者における輸血開始基準について-無作為化比較対象試験の知見と問題点-
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 19-25)
輸血の基準は非常にあいまいだが、最近は自分の中で急性出血の場合はHb 8g/dlを下回った場合に輸血を考慮するようにしている。Hb 7g/dlで踏みとどまれそうなときは考えるが、進行性の出血があってHb 7g/dlであれば輸血をオーダーする。
そういう意味ではHb 7~9g/dlなどを目標とするrestrictive transfusion strategyは文献的にも10~12g/dlを目標とするliberal transfusion strategyに劣らないという結果が出ていてほっとした。
2/12 敗血症性ショック患者に対するバゾプレシン投与時の肝・腎血流の評価
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 27-32)
非常に勉強になった。
カテコラミン使用時にドパミン→ノルエピネフリン→バゾプレシンという流れはよく理解できる。しかし末梢の血管を絞めれば絞めるほど重要臓器への血流が滞る。血管抵抗の評価はResistance index(RI)を用いている。
本文献によると、バゾプレシンの昇圧機序は、
①血管平滑筋のバゾプレシン受容体を介する血管収縮
②血管平滑筋の一酸化窒素産生の抑制
製本後(2010.2.14~2010.3.6)
2010年10月2日2/14 生後17日目に生体肝移植術を施行された新生児劇症肝不全の1例
(日本集中治療医学会雑誌 17 43-48)
肝移植の周術期管理のポイントは、①凝固異常の是正、肝性昏睡物質の除去および腎不全に対する腎補助を目的とした適切な血液浄化療法、②術中に生じた水分・塩分負荷の回収と可及的早期の人工呼吸からの離脱、③グラフト血流の維持、④拒絶反応の抑制と感染症の予防である。
①について著者らは術後1~2週間は凝固優位の状態になるためにメシル酸ナファモスタットやFFP、血小板を投与し、ACTを回路内で200~250sec、患者血液で150~200secで調節している。また血液の粘度を亢進させないためにHt 25%前後に維持している。バスキュラーアクセスは右大腿静脈に7Fr、10cm挿入し、装置はTR-525を2台用いている。回路はいずれもU-525MC、モジュールはCHDFは東レCH-0.3N、PEには旭クラレのOP-02Wを使用している。プライミングはRCCとFFPの合成血(Ht 30%前後)を用いている。設定は以下のようである。
★ CHDF:QB 10~20/min、QD 1000ml/hr、QF 1100~1200ml/hr、QS 100ml/hr
★ PE:QB 10~20/min、血漿分離速度100~140ml/hr、FFP補充速度120~160ml/hr
②は状況による。筆者らは術後4日目に抜管している。③ではPGE1を0.01γ、AT-Ⅲ製剤を投与し活性を70%以上に維持している。④はmPSL、タクロリムスを投与し、タクロリムスは血中濃度10~12ng/mlを目標に投与していた。
2/15 脳低温療法を施行した蘇生後脳症の1乳児例
(日本集中治療医学会雑誌 2010 49-53)
新生児の低酸素性虚血性脳症、成人の蘇生後脳症はある程度のコンセンサスが得られている。乳児の蘇生後脳症に関する報告。
筆者らは目標温度を食道温34℃とし、72時間維持している。インスリン持続静注により血糖値が150mg/dl以下になるように管理もしている。小児を対象とした脳低温療法の至適温度に明確な基準はないが、ILCORは32~34℃を推奨し、維持時間は脳圧の亢進がなければ12~24時間としている。新生児は72時間。
2/16 血漿交換が奏功した小児thrombotic thrombocytopenic purpur
(日本集中治療医学会雑誌 2010 59-63)
TTPってADAMTS13活性の低下が一因となって発症するんだ~。勉強不足。
もともとADAMTS13活性が低下しているならFFPで補充。ADAMTS13を破壊するような要素が血液中に存在するのなら血漿交換というわけだ。分かり易かった。
HUSとの鑑別が重要。以下の図は文献から引用。
2/17 急性呼吸促迫症候群および敗血症を合併した肺結核の一救命例
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 71-72)
徳島大学の大黒先生の報告。結核に対応する時に医療従事者がN-95マスクおよび手袋、帽子、ガウンを着るのは当然。呼吸器設定は「PEEP 10~15cmH2O、吸気時間は呼気終末に流量がほぼ0になるよう0.8~1.0secで調整した」とあるが、「呼気終末に流量がほぼ0になるよう」というのはどういう意図があるのだろうか?再呼吸をしないようにってことか?高炭酸ガス血症はpH 7.2以上かつPaCO2 100mmHg以下であれば許容した。
結核によるARDSなのか?
2/18 腹臥位療法と背側から体外式高頻度振動換気の併用を試み、救命し得た誤嚥による急性呼吸促迫症候
(日本集中治療医学会雑誌 2010 17 75-76)
体外式高頻度振動換気(EHFO)にはRTX(メディベント社、英国)を用い、1回2時間の腹臥位療法中にRTXのクリアランスモード(振動数600回/min、振幅圧-10cmH2O)を30分併用とした。腹臥位は120分施行し、その開始後20分から30分間RTXを併用したみたいだ。またARDSの背側の無気肺を開通するには60cmH2Oの圧が必要らしい。腹臥位療法とEHFO併用の弱点として、事故抜管、カテーテルやドレーンの抜去、眼球圧迫などがあるという。
2/19 膿尿を認めない上部尿路感染症患者の臨床的特徴に関する検討
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
膿尿を認めない上部尿路感染症患者の割合は、膿尿を認める上部尿路感染症患者を含めた全体に対して10~20%で無視できない。原因菌の違いは膿尿を認める場合はE.coliで、認めない場合はEnterococcusが多かった。E.coliが腎尿路粘膜細胞に特異レセプターを持つP線毛を有し宿主細胞に定着し、α–ヘモジデリンなどの様々な細胞障害因子を発し、宿主の防御機構を破壊し感染が成立する。その際に白血球が動員され膿尿が発生する。Enterococcusは生物膜を形成し尿路に定着するために白血球が動員されにくいという考察がある。
結局、結論は症状や検査値から膿尿を認めない上部尿路感染症患者を発見することは不可能で、目視で細菌を確認することが重要であると言える。
2/20 リツキシマブ投与3ヶ月後に無顆粒球症を呈したステロイド依存性頻回再発型ネフローゼ症候群の7
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
リツキシマブ(リツキサン:10mg/ml)は抗ヒトCD20ヒト・マウスモノクローナル抗体でB細胞性非ホジキンリンパ腫やネフローゼ症候群で使用されている。筆者らは1回375mg/m2を計4回で効果を認めている。無顆粒球症はG-CSF投与で3日間で好中球が正常値までに回復している。その発生の予測にCD20陽性細胞数の減少が使えるかもしれないとのこと。
2/21 小児ネフローゼ症候群患者に対する遺伝子組み換えヒト血清アルブミン製剤の使用経験
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
まず商品名は「メドウェイ」って言うらしい。初めて知った。適応は肝硬変症、ネフローゼ症候群、熱傷、出血性ショックらしく、遺伝子組み換えヒト血清アルブミン製剤(rHSA)の構造は献血由来アルブミン製剤(nHSA)と同等で製造過程で動物由来製剤を用いていないので感染性物質混入の恐れがない。
副作用の発現の頻度が多いとされる血清抗ピキア酵母IgE抗体陽性者をチェックするために投与する前に抗体検査をしなければならない。
2/22 品胎のうち一卵性双胎にみられた膜性腎症の症例
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
膜性腎症は上皮下の免疫複合体沈着と糸球体基底膜のびまん性肥厚を特徴とする腎症。病理所見はPAM染色における特徴的なspikeと、電子顕微鏡による高電子密度沈着物(Electoron dense deposits;EDD)らしい。懐かしい…、思わずイヤーノートを開いてしまった。ちゃんと載っている。医学生のころの勉強も無駄じゃない。
膜性腎症は原発性か二次性かの鑑別が重要で、重金属や有機溶媒への暴露、肝炎ウイルス感染、膠原病等の二次性の要素を鑑別することが原発性への診断に必要である。また遺伝的要素としてはHLA-DR2、DR3、DQA1などが有名で、また特発性膜性腎症ではIgGサブクラスがIgG1、4が有名で、ループス膜性腎症ではIgG1、4、3優位の所見があると言われているらしい。またEDDの付着部位の差により二次性の場合はEDDが大小様々で部位も基底膜内、内皮下、傍メサンギウム領域など様々らしい。同様の所見を呈するものに膜性増殖性腎炎Ⅲ型、ループス腎炎などがあるらしい。またEDDの新旧や大きさが均一なhomogenous typeと、不均一で様々な段階が見られるheterogenous typeでは後者のほうが末期慢性腎不全に陥りやすいという報告もある。治療は診断から半年以内に自然観解する症例も多数あるので免疫抑制剤は避けるべきとある。塩分制限や利尿剤で浮腫のコントロールを図り、高血圧治療と蛋白尿を減らす目的でACE阻害剤やACE受容体阻害剤を用いることが推奨されている。
2/23 小児ネフローゼ症候群に対する免疫抑制剤シクロフォスファミドの有効性について:43例の臨床的
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
ステロイド依存性・頻回再発型ネフローゼ症候群の第1選択薬としてシクロフォスファミド(CPM)の2mg/kg/day(朝食後1回)、8~12週間投与の有効性を検討している。ステロイド依存性・頻回再発型ネフローゼ症候群の第1選択薬はCPM以外にシクロスポリンA(CyA)、ミゾリビンがあるが、CyAの有効性は明らかであるが腎毒性の問題があり長期投与の場合に問題となる。いずれ導入するにしてもなるべくCyAの投与を遅らせたいということで今回の検討となった。CPMの副作用としては性腺機能障害や発癌性などがある。
簡単な算数だが興味深い計算が。性腺機能障害はCPMの累計投与量が200mg/kgでは問題にならないが、300mg/kgを超えると無精子症の頻度が高くなる。CPMは安全域が狭く、2.5mg/kgを12週では累積投与量が210mg/kgとなり性腺機能障害の危険性を否定できず、2mg/kg/dayの8週間を2回繰り返すと累積投与量は200mg/kgを超えるために、CPMの使用は1回のみに限る方が安全であると筆者らは述べている。
2/24 偽性低アルドステロン症Ⅰ型
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
偽性低アルドステロン症Ⅰ型(PHA1)はレニン–アルドステロン系の亢進にも関わらず、遠位尿細管でのナトリウム再吸収が障害されているために低ナトリウム血症、高カリウム血症を呈することを特徴とする稀な尿細管疾患。PHA1は新生児期に適切な脱水・電解質管理がなされれば塩分補充療法のみで成長発達も改善する予後良好な疾患。
常染色体優性遺伝(adPHA1)と劣性遺伝(arPHA1)の遺伝形式をとり、原因はそれぞれミネラルコルチコイド受容体(MR)の遺伝子異常とアミロライド感受性上皮性Naチャネル(ENaC)の遺伝子異常である。
★MR(adPHA1):尿細管上皮細胞に存在
★ENaC(arPHA1):尿細管上皮細胞、気道、汗腺、大腸に存在→より重篤
症状は新生児期から乳児期にかけて哺乳力の低下や嘔吐、不機嫌、発熱などを呈し、体重増加不良や発育不全に至るケースも。自然軽快やレニン–アルドステロン系の亢進のみで無症状も存在する。鑑別は先天性副腎皮質過形成や先天性副腎低形成症であり、arPHA1では汗の電解質測定(sweat test)も行われる。Batter症候群で新生児期に高K血症を呈するものがあり鑑別が重要。治療目標は電解質が正常化し発育不全が改善すること。レニン–アルドステロン系の亢進が正常化する必要はない。
2/25 腎性低尿酸血症における運動後急性腎不全の発症機序に関する考察
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
腎性低尿酸血症は、human urate transporter 1の異常により低尿酸血症をきたす疾患で、運動後急性腎不全の合併が多い。確固たる診断基準は存在しないが、
①血清尿酸値:2.0mg/dl以下
②尿酸クリアランス:25%以上
原発性以外にも続発性もあり、Fanconi症候群、尿細管性アシドーシス、慢性肝疾患、悪性腫瘍疾患、白血病、慢性腎疾患などが挙げられる。
2/26 インフルエンザAに合併した気管支粘液塞栓症により呼吸不全が遷延した1学童例
(日本小児救急医学会 Vol.9 No.1 2010)
重要なポイントは「発症後急激に進行した無気肺と治療に反応しない呼吸状態から気管粘液栓の存在を疑い、気管支鏡による原因検索を試みた」というところ。
基礎疾患のない患児、先天性心疾患児(Type Ⅱが多い)、アレルギーを持つ児(Type Ⅰが多い)が3分の1ずつ。
組織学的には、
① Type Ⅰ(inflammatory type):好酸球を主体とする炎症細胞を含むフィブリン
② Type Ⅱ(acellular type):ムチンと単核球
てな感じかな。非常に示唆に富む報告。
2/27 車のパワーウインドウによる頚部絞扼の1例
(日本小児救急医学会 Vol.9 No.1 2010)
へ~、っていう報告。
2/28 薬剤リンパ球刺激試験で陽性を示したドブタミン過敏症の1例
(日本小児救急医学会 Vol.9 No.1 2010)
ドブタミンは心収縮力を増強するが、心拍数、不整脈、末梢血管に対する作用が弱く、心不全治療に用いられている。
ドブタミン過敏症を時間はかかったがリンパ球刺激試験でもって確定させている。重要なメッセージは「末梢ルートからの投与で、血管炎を繰り返したり、中心静脈ルートからの投与で、すぐに発熱したり、血液検査で好酸球増多、肝機能障害を認めたら、過敏反応を疑い、薬剤の変更等、適切な処置が必要」とある。
3/1 一過性偽性低アルドステロン症の3例
(日本小児救急医学会 Vol.9 No.1 2010)
前もあったな~。Kを下げるのにβ作用を使うのは初耳だった。吸入って!
3/2 保存ガスリーろ紙血にて脂肪酸代謝異常症が判明した1才女児突然死の一例
(日本小児救急医学会雑誌 Vol.9 No.1 2010)
アシドーシスを伴わない低血糖症を診たときに「脂肪酸代謝異常症」を疑わなければならず、乳児期に発症する際は飢餓や感染などのストレスを契機に、低血糖症やライ症候群、乳児突然死症候群で発症する。つまりSIDSを診たときに当然これらを鑑別しなければSIDSを正しくは診断できないということ。
診断は新生児期のろ紙血からタンデム質量分析にてなされている。神戸市がろ紙血を5年間保存していることも特筆すべきことだ。
3/3 溶血性尿毒症症候群に併発した急性壊死性脳症
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
腸管出血性大腸菌に合併したHUSでは、何らかの形で中枢神経症状を呈し、その確率は約30%に上るらしい。過去の報告では予後不良例では、局所の梗塞性病変が大脳基底核およびその他の脳梁域に多発している症例が上げられるらしい。急性壊死性脳症のような画像所見を呈するは稀らしいが、著者らの症例は永眠されている。
3/4 小児の尿路奇形:乳幼児の水腎症とVURにどう対処するか?
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
小児の尿路奇形の主要な病態は以下の2つ。
・膀胱尿管逆流
・尿路閉塞
小児泌尿器科医のジレンマは、胎児期や乳児期の水腎症が今後の腎機能に及ぼす影響、乳幼児期のVURが今後の腎機能に及ぼす影響についてははっきりとしたスタディがない為に治療の要否を判断しづらい点らしい。
胎児期の水腎症の評価については、腎盂の前後径(APD)が15mm以上の場合は出生時のエコーやVUCGを施行する必要があると記載がある。また腎盂拡張と別に評価しなければならないのが総腎機能に影響を及ぼしうる下部尿路閉塞疾患(LUTO)である。
新生児・乳児期にみられる水腎症の対応については、Society of fetal urologyのGrade 3~4は自然に改善するものが半数にも満たない為に経過観察が必要であると言われている。
反復UTI乳児に伴うVURの特徴は、乳幼児のUTIでVUR Grade Ⅲ以上の場合は反復UTIへの注意が必要であると考えられ、逆に乳幼児のUTIでVUR Grade Ⅱ以下の場合は、VURを伴わないものと同様の対応でよいらしい。
急性期UTIに施行されたDMSAで異常を認めない症例については腎瘢痕を呈する可能性はない(DMSA異常の定義は明らかな辺縁不整を伴う場合、もしくは相対的摂取率が40%以下の状況)。DMSA異常を伴うGrade Ⅲ以上のVURは外科的治療の適応が高いといえる。
3/5 溶血性尿毒症症候群発症8年後より高度蛋白尿を呈し、糸球体硬化および著明な間質の線維化を認めた
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
溶血性尿毒症症候群は臨床的には溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全の3徴をもって診断するとある。Kamiokaらによると、透析導入の危険因子は、HUS発症時にNa≦130mEq/lおよび血清ALT≧70、中枢神経症状出現の危険因子は、HUS発症時にCRP≧5.0mg/dlらしい。またHUS後の腎機能悪化の経過については3パターンあり、HUSからそのまま腎機能が改善しない場合、一旦改善して2~5年かけて腎不全になるパターン、一旦改善するが蛋白尿が持続して5年以上かけて腎不全に進展するパターンがある。いずれにしても長い腎機能のフォローが必要!
3/6 腎静脈血栓症を繰り返す小児膜性腎症の1例
(日本小児腎臓病学会雑誌 Vol.22 No.2)
ネフローゼ症候群では常に腎静脈血栓症の存在を念頭に置かなければならないらしい。そのマーカーとしてDダイマーは有用らしい。
FDPもDダイマーも血管内での二次線溶の存在を示唆するが、FDPはフィブリンだけではなくフィブリノゲン分解産物も反映する。かたやDダイマーはフィブリン分解産物でありその意味で特異性が高い。Dダイマーが上昇している場合は血栓症やDICの可能性が高い。
製本後(2009.12.28~2010.1.19)
2010年10月2日12/28 持続静注法の基礎
(Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008)
薬物動態、特に持続静注する場合の血中濃度の維持にコンパートメントモデルが重要である事が認識できた。大切なのは、「血清中濃度が最小治療濃度よりも高く、かつ中毒発現濃度よりも低いことが必要である。可能であれば、その2 つの濃度の中間値よりも高めの濃度が理想的である。」点だ。
更にコンパートメントが「1」であっても、「2」でも「3」でも体内の効果部位濃度が一定であれば、以下の式が成り立つ。
投与速度(mg/min)=-除去速度=CL×定常状態の濃度(mg/ml)
CLは…、
●プロプフォール:27±5ml/kg/min
●レミフェンタニル:13±2ml/kg/min
この考え方は非常に有用だ。そして効果部位濃度が一定になるのは、1コンパートメントモデルでは半減期をt1/2としたときに、4×t1/2で定常状態の94%に、7×t1/2で99%に達するという報告がある。
12/29 プロポフォール
(Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008)
ここではTarget-controlled infusionについて簡潔に述べられている。非常に参考になったが、具体的な効果部位濃度については記載がなかった。
12/30 レミフェンタニル持続投与による麻酔管理
(Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008)
レミフェンタニルはオピオイド系鎮痛薬であり半減期は約3分である。この切れのよさが問題点にもつながる。つまり術後疼痛、PONV、シバリングである。反復投与では蓄積性がなくその特徴がよく現れる。持続投与では投与速度を変更して約15~20分で平衡状態に達するとの記載があった。呼吸抑制は0.1μg/kg/minで起こるとされており、自発呼吸を温存させた状態で使用するには0.03~0.05μg/kg/min程度の投与量とする。
実際の投与法として本文献では「レミフェンタニル0.5μg/kg/min(高齢者や高リスク患者では0.25μg/kg/min)で持続投与を開始すると、「体が温かくなった感じ」「ふわふわする感じ」などの自覚症状で確認されるレミフェンタニルの効果が3 ~ 5 分程度で発現する。次にプロポフォールなどの鎮静薬を投与して入眠を得たのち、換気可能であることを確認して筋弛緩薬を投与してから気管挿管する。」とある。気道確保後に速やかに投与速度を下げることも忘れてはならないとある。
12/31 ロクロニウム
(Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008)
ロクロニウムは構造上は、ベクロニウムの3位に水酸基がついているものと考えていいのかもしれない。代謝産物が筋弛緩作用を持たないことが、半減期が短い事の理由である。持続投与をする際は筋弛緩モニターが必須で、麻酔導入時は0.6mg/kgの投与で90~120sec、1.0mg/kgの投与で60~75secで完全遮断が得られる。5%の回復はそれぞれ30minと60min後である。投与必要量は成人<小児、プロポフォール&フェンタニル使用時>セボフルラン使用時である。TOFを1~2/4で維持した場合に、中止から完全回復までの時間は30~60minである。
1/1 大量出血・急速出血への対応
(Anesthesia 21 Century Vol.10 No.2-31 2008)
出血は麻酔科医だけで対応しきれるものではなく施設がどの程度血液製剤をストックできるか、外科医とのコミニュケーション等々、麻酔科医のもとに血液が届くまでに随分と課題が多い。大量出血時の対応において、交差適合試験の省略は10数%、異型適合血の使用率は2%以下と低いらしい。その結果、①低体温(≦34℃)、②代謝性アシドーシス(pH≦7.20)、③PTorAPTTの50%以上の延長は外傷死の3徴に達してしまう可能性も否定できない。何を投与するのかということを以下に述べる。
① 輸液
人工膠質液の投与量は20ml/kgまでとされている(例外あり)。
② 赤血球濃厚液
交差適合試験を省略する場合は同型を用いるが、同型の赤血球濃厚液が不足している場合は、O型赤血球濃厚液が万能血。しかし患者の血液型によってはO型以外も適応になる事を理解しておくべき。不規則抗体陽性でも交差適合試験を省略する場合はABO型適合を優先。投与後は溶血に注意するが、不規則抗体によって生じる溶血は通常血管外溶血であり,ABO 不適合血輸血と異なり致死的副作用は稀。
③ 新鮮凍結血漿、血小板濃厚液
出血が外科的に制御可能にならなければ凝固因子、血小板投与は無効。止血機能自体は正常の20~30%あれば維持可能。新鮮凍結血漿,血小板濃厚液の万能血はAB型であり,O型製剤はO型以外の患者には投与できない。正常な凝固にはフィブリノゲン100mg/dlが必要。血小板は5万/μl以上が望ましい。
体重が60kgの場合…、
◆新鮮凍結血漿450ml投与でフィブリノゲンは約30mg/dL上昇
◆濃厚血小板液10単位投与で約2.5万/μl上昇
輸血時に用いられることもある高速輸血ポンプは空気注入の可能性もあるので注意が必要(輸血用としては認可されていない)。
1/2 生体腎移植の麻酔(腎移植に関する基本的な知識)
(A net Vol.12 No.2 2008)
名古屋第二赤十字の寺沢先生の文献。近年ではABO血液型不適合の生体腎移植も確立され、全体としての5年移植腎稼働率は90%以上となっている。
【手術まで】
(1)レシピエントの術前評価
ヒト組織適合抗原はHLA-A、B、DRで1対ずつ6つあり、その内いくつ適合しているかが術前評価として重要。しかし生体腎移植についてはHLA抗原が一致しなくても可能。またベースの心疾患、悪性腫瘍、感染症の有無もチェック。
(2)ドナーの術前評価
尿検査、GFR、シンチによる左右腎機能評価、3D-CTによる血管走行の評価。GFRは少なくとも70~80ml/min以上あることが望ましい。
(3)免疫抑制剤
導入剤としてはバシリキシマブが移植前後で投与され、維持としてミコフェノール酸モフェチル(シクロスポリン)、カルシニューリン阻害剤(セルセプト)、ステロイド等が用いられる。
【外科的手順】
移植腎の血流再開から尿流出までの平均は約25分。移植床は右腸骨窩が多いが、2 次移植の場合や、膵腎同時移植の場合は左腸骨窩も。
【留意する事柄】
虚血性心疾患、高血圧、弁膜症ならびに2次性の上皮小体機能亢進症がある場合も。VURで頻回の手術を受けている場合はラテックスアレルギーの可能性も考える。
【術中管理】
低流量麻酔ではcompound A濃度が高値になるという報告もあるが、それによる腎障害は頻度として低いとも。補液は初尿流出までは生理食塩水、その後は乳酸リンゲルを用いるが、生理食塩水がリンゲル液に比べアシドーシスやK上昇の頻度が多いという報告もある。術中血圧はドナーの血圧以上を保てばよい(移植腎は神経が遮断されているので…)が、長期的な高血圧はgraft failureの重要なリスクファクター。
1/3 生体腎移植の麻酔(3つのトピック)
(A net Vol.12 No.2 2008)
腎移植時のモニターとしてFloTrac/Vigileoによる心拍出量(APCO)と肺動脈カテーテルによる心拍出量(ICO)は相関し、FloTrac/Vigileoによる1回拍出量変動(SVV)と肺動脈カテーテルによる肺動脈楔入圧(PCWP)は相関する。今後は径食道心臓エコーも重要な役割を果たす。
腹腔鏡下移植腎摘出術も今後普及するかもしれない。
ABO適合、ABO不一致、ABO不適合の3パターンがあり、不適合はドナー腎に対しレシピエントが抗体を有している場合をいう(例:レシピエントがA 型の場合、B型抗体を有しており、B型抗原を持っているドナーであるB型・AB型は不適合となりO型は不一致となる)。この場合は脾臓を同時に摘出するか、脾臓は摘出せずとも免疫抑制剤で抗体価を厳密にコントロールする必要がある。
1/4 出生直後に発症したビタミンK欠乏性出血症の成熟新生児の2例
(日本小児科学会雑誌 113巻10号 1576-81 2009)
神戸大学小児科の森川悟先生の論文。特にリスクのない正期産児が初回のビタミンK投与前にその欠乏が原因と考えられる出血症状を呈することを報告し、過去に同様の症例が合計4例ある事を報告している。海外では経口哺乳が確立した後に経口的に投与するが(あとは生後約1週&生後1か月)、出生当日や出生時に筋注している諸国もあり、このような症例の予防には有用かもしれない。しかしビタミンKの筋注に小児がんのリスクが上昇することを報告している人がいることは知らなかった。母体がビタミンKの活性を阻害する薬剤を内服している場合や長期の経静脈栄養をしている場合は注意を要することは言うまでもない。
非常に勉強になった。
1/5 著名な高カリウム血症をきたした重症乳児アトピー性皮膚炎の2例
(日本小児科学会雑誌 113巻12号 1827-1829 2009)
無治療の結果、アトピー性皮膚炎に起因する高K血症を静岡こどもの王先生が報告している。どちらも無治療で経過し、診断の契機は発達の遅れと嘔吐…、皮膚所見の重症さは言うまでもなかろう。一般生化学でK上昇を認めた。心電図所見はT波の激高で、P波消失、QRS時間延長、PR延長はなし。治療は輸液の生理食塩水への変更、炭酸水素Na、フロセミド、グルコン酸カルシウム、GI療法などで、イオン交換樹脂も使用していた。高K血症の治療のおさらいのような症例だった。アトピーは苦しんでいる子供やその保護者も多いが、無治療で経過しこのような状態にあると不整脈を惹起する可能性もある。注意が必要だ。
1/6 B型溶血性連鎖球菌によるcellulitis-adenitis syndromeの1症例
(日本小児科学会雑誌 113巻12号 1835-39 2009)
GBSの新生児期ではなく乳児期早期の遅発型に関する報告。重症感染症ではなく局所感染として発症する場合、特に頚部、顎部、鼠径部に限局する蜂窩織炎、リンパ節炎を伴い症例をcellulitis-adenitis syndromeというらしい。初めて知った。
1/7 Streptococcus mitisによる重症壊死性筋膜炎の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻12号 1840-44 2009)
劇症型溶連菌感染症は敗血症性ショックや多臓器不全、壊死性筋膜炎をおこし、死亡率は約40%とされる。治療はPCGとCLDMの高用量投与が推奨されるが、外科的治療が早期になされるかどうかが予後を左右する。
1/8 MRSA敗血症から感染性心内膜炎、感染性動脈瘤を来した小児の一例
(日本小児救急医学会雑誌 8巻3号 315-21 2009)
適切な抗菌薬治療にもかかわらず血液培養の陽性が続く場合には必ず人工物への付着か感染性心内膜炎を考えないといけない事を再認識した。埼玉の後藤先生の論文だった。成人領域では全動脈瘤中の感染性動脈瘤の占める割合は0.7~3.0%くらいであるが、一度形成されると破裂のリスクは約50~80%と高率。原因菌としてはブドウ球菌とサルモネラが多いらしい。サルモネラ???意外!
1/9 回盲部膿瘍を形成したYersinia enterocoliticaによる腸間膜リンパ節炎の1
(日本小児救急医学会雑誌 8号3巻 322-26 2009)
非常に難しいケースだと思った。聖路加の中村先生の論文。確かに開腹を避けることがベストだが、それには足底の皮疹の評価を充分にすべきだった事と、高熱、下痢、腹痛を認めた場合に初期よりアミノグリコシドを含む広域スペクトルの抗菌薬を投与するというのは非常に高度な要求だ。開腹手術によって採取した検体はエルシニアの可能性を付記して細菌検査室に提出することが重要という事は勉強になった。
Yersinia enterocoliticaは人蓄共通感染症で通性嫌気性グラム陰性短桿菌で、潜伏期は1~11日、症状は高熱、腹痛、下痢等で症状は2日~4週間続く。虫垂炎を疑った際に頭の片隅においておくべき鑑別診断かもしれない。
1/10 アミノ酸調整乳使用中に発症したセレン欠乏による二次性心筋症の1例
(日本小児科学会雑誌 113巻10号 1582-86 2009)
セレンの欠乏というものがあるということは知っていたが、具体的な症状は知らなかった。滋賀医科大学の古川先生の文献。臨床症状としては爪の白色化・変形や筋肉痛・筋力低下から重度のものは心筋障害まできたすらしい。
ミルクアレルギーの診断についてはもう少し詳しく知りたい部分もあるが、その治療として使用していたアミノ酸調整乳(エレメンタールフォーミュラ)にセレンが含まれていないことは勉強になった。筆者らは治療としてセレン内服液(100μg/ml)を15μg/日使用したらしい。詳細は正書を参考にされたい。ついでに通常の食事を摂取していればセレン欠乏に陥ることはないことも付記したい。植物に含まれるらしい。
1/11 集中治療におけるアルブミン製剤の適正使用
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 425-27)
アルブミン製剤の適正使用が叫ばれているのは知っていたが、しっかりと文献に記載されているのは初めて読んだ。慶応義塾の半田先生の論文。
1998年Cochrane報告により出血性ショック、熱傷、敗血症、および慢性疾患に合併した低アルブミン血症における30のRCTにおいて、アルブミン使用群の方が短期死亡率が有意に高かったことが事の発端である。その後、SAFE studyにより循環血液量蘇生における生食とアルブミン製剤間に有意差がなかったことで議論に決着が打たれ、日本でも低蛋白血症における病態や他の治療法では管理が困難な状態に対して「一時的に」病態の改善を図る手段としてその使用を限定している。更には急性では3.0g/dl、慢性では2.5g/dl以下にならなければ投与は不要という数値目標まで掲げられた。
特に術後早期の低アルブミン血症は、毛細血管アルブミン透過率の上昇の結果に起こるアルブミンの血管外への移動であり、自然に回復する。よってアルブミン投与の意義がない。アルブミン製剤が血液製剤であるということをしっかりと認識する必要がある。
1/12 硬膜下膿瘍を合併したインフルエンザ菌による化膿性髄膜炎にCPが奏効した1例
硬膜下膿瘍は髄膜炎の合併症のひとつ。その診断にMRIの拡散強調画像とGd造影が有用とある。拡散強調画像は初期の膿瘍で高信号を示し、有効な治療においては信号は低下する(治療効果の指標)。Gd造影は被膜が形成される1~3週頃に増強されるようになり、数ヶ月持続する事もあるので治療効果の指標には使えない。
まあ髄膜炎後の硬膜下膿瘍を疑うのであれば拡散強調画像とGd造影は必要かな。
CPは髄液移行性がよくサンフォード感染症治療ガイドには12.5~25mg/kg×4/dayで、最大は2~4g/dayである。至適血中濃度はpeakで15~20μg/dl、troughで5~10μg/dlらしい。副反応としては骨髄抑制(可逆的or不可逆的→再生不良貧血で致死的)、Grey症候群があり、現在では第1選択にはなり得ない。しかし、グラム陽性菌、グラム陰性菌に幅広い抗菌活性を持ち、クラミジア、マイコプラズマ、リケッチア、チフス、パラチフス、サルモネラ腸炎、発疹チフス、発疹熱、ツツガムシ病、鼡系リンパ肉芽腫に有効。使用前には十分な説明が必要とされている。
本当に勉強になった。
1/13 Helmet型マスクの時代は来るか?
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 429-32)
単純に為になった。リークが許されないVCVではその適応は困難とあった。それ以上に特に感想はない。
1/14 拡張不全による心不全
(日本集中治療医学会誌 2009 16 439-45)
磯部光章先生の総説。心収縮機能低下を伴わない拡張機能障害は非常に気になる病態の一つ。収縮機能障害と相対する概念ではない事は重要。高血圧、糖尿病、肥満とも関連が深く、vascular failureの病態をとりやすい。vascular failureの病態の病態とは、血圧の上昇を伴い、急激に発症し、肺うっ血が強く、全身的なうっ血が弱いという特徴。利尿薬や血管拡張薬による治療に速やかに反応する事も多いらしい。
拡張不全を超音波で正確に評価できる方法があればおもしろい。今度、機会があったら聞いてみたい。
1/15 高度四肢壊死を呈したmethicillin-resistant Staphylicoccu
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 471-76)
丹羽英智先生の症例報告。名前しか知らないが非常に怖い病態だ。黄色ブドウ球菌の外毒素による皮疹とショック症状を主体とする疾患であり、初期の感染のコントロールが重要といえる。とにかく疑う事。それが臨床能力というものかもしれない。
1/16 保存的治療で治癒した脱水と痛風腎による血液尿素窒素271mg/dlの急性腎不全の一例
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 495-96)
透析に関しては不均衡症候群の可能性も考慮し、時として保存的治療で経過を診なければならないという症例だった。
1/17 重症セプシス治療に関するエビデンスの不確実性
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 255-62)
もてはやされるSurviving Sepsis Campain Guideline(SSCガイドライン)における以下の4つの有用性について。僕はこれは非常に画期的なガイドラインだと思うが、評価は慎重にするべきだと思う。
① 強化インスリン療法
低血糖のリスクはあるも有用な結果は得られていない。
② ステロイド治療
輸液負荷や血管作動薬によって血圧が上昇しない症例に対して使用を考慮してもよいのかもしれない。投与量は200~300mg/day×5~7dayである。
③ 免疫グロブリン療法
よくわからん。米国で有用であったとされる検討は投与量が我が国の数~十数倍なのでわからない。
④ 活性化プロテインC療法
非常に重症な成人にのみ弱く推奨。小児や軽症の成人には投与しない!
ガイドラインの評価は自身で慎重にするべきである。
1/18 中心静脈血と動脈血の炭酸ガス分圧較差と心係数の相関関係の検討
(日本集中治療医学会雑誌 2009 16 273-77)
心係数が低下すれば動脈血と混合静脈血の炭酸ガス分圧較差は上昇することは有名。これが中心静脈血で代用できるかということ。混合静脈血は肺動脈にカテーテルを挿入することが必要になるので結構煩雑。この検討の結果は心係数が低い症例については心係数と中心静脈血‐動脈血炭酸ガス分圧較差は負の相関関係を認めることが分かった。